3線改造式AOM5024で本格バイノーラルマイクを作ろう with 3Dプリンタ

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美耳・改

https://github.com/DrRoot-github/bimimi-5024

概要

最後にAOM5024という市販品では最高クラスのSN比80dBのカプセルを使ったなんちゃってバイノーラルマイクを制作したのがなんと5年前。
https://drroot.page/wp/?p=148

その後より高性能なカプセルが現れるというような事もなかったが、今回3Dプリンタを導入した事と、ビット・トレード・ワン社が出しているバイノーラルマイク「美耳」がオープンソースで耳型のstlファイルを上げているので、せっかくだからこれをベースにして一台作ってみようという事になった。
https://bit-trade-one.co.jp/bimimi/
https://github.com/bit-trade-one/ADBMM

目的ないし目標

美耳の構成は往年のXCM6035をそのままソース接地で駆動させたシンプル極まりないもので、カプセルそのものだけで言えばお一つ50円で買えてしまう。XCM6035も音質自体はかなり良いのだが、やはりノイズフロアをもう少し下げたい+最大レベルを稼ぎたいということで、ここは3線改造したAOM5024を活用する。
また、USBから別途電源を取りオペアンプ(MAX4466 https://cdn-shop.adafruit.com/datasheets/MAX4465-MAX4469.pdf )にぶっ込んでる作りも制作上ちとややこしいのでここはファンタム駆動できるようにしてしまおう。

筐体は3Dプリンタで作成する。3Dプリンタも3D CADツール(Fusion 360)も初めて使うので四苦八苦だが良い教材と割り切る。
本体の箱部分はPLA、耳型部分はTPUで印刷する。TPUは柔らかめのフィラメントなので、上手いこと生成できればそれっぽい質感になる…はず。

電子回路について

回路図

AOM5024カプセルは事前に3線改造をしておく。3線改造については下記を参照。
https://drroot.page/wp/?p=276

各素子の説明

抵抗とコンデンサは個別に買う。
マイクがマルツでしか実質買えないのでマルツで揃えたくなるが、なまじ検索エンジンがクソなので秋月の方がお勧め。
抵抗は誤差1%のやつなら何でも良い。コンデンサも物によって違いがあるらしいが全然わからん。

抵抗
マルツ https://www.marutsu.co.jp/pc/i/13426/ バラ買い可 定格違いはページ内リンクから飛べる
秋月 https://akizukidenshi.com/catalog/g/g108550/ 100本入り 探せば他の定格のも出る

J1 = 2sk2145BL

マルツ https://www.marutsu.co.jp/pc/i/15791832/
秋月 https://akizukidenshi.com/catalog/g/g110724/

差動増幅に使うので、自分でマッチングする必要が無いデュアルFETを採用。
ユニバーサル基板で組む場合は、DIP化をする為に変換基板↓も買うと良い。
ランク違いで~GRと~

マルツ https://www.marutsu.co.jp/pc/i/1556832/
秋月 https://akizukidenshi.com/catalog/g/g103659/

R1a, R1b, R2, C1 マイクカプセルのドレイン電源生成部

分圧してマイクのドレインに入力する電圧約5Vを生成する。C1はノイズ成分を軽減する目的だが無くても正直動く。
あまりここの抵抗値を大きく取りすぎると、マイクに流せる電流が絞られすぎるので、無理に大きな値にする必要は無いと思う。
分圧の計算はファンタム提供側の6.8kΩ2本を考慮する必要があるので、自分で設計する場合は注意。

C1はたかだか数Vしかかからないので、ファンタム48Vを気にして高耐圧である必要はまったくない。
無い場合は↓とか、まぁ適当で。ただし容量を増やしすぎると充電に時間を食うので起動に時間がかかる変なマイクになる。
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g110592/

R3 マイクのソース抵抗

ソースフォロアの抵抗値いくらがええの?問題は諸説あると思うが、まぁ大凡1k ~ 10kの間で適当に取っちゃって問題ないだろう。
なんでもAOM5024内部のFETはDSK3J02という代物らしく、こいつの増幅率がたかだか1.5mSしかないという非力な代物なので、多少デカ目の抵抗をぶら下げた方が良さそうと判断した。
理屈の上ではFETの増幅率とソース抵抗Rsの積が十分大きくなる時に利得が1へ近づくはずだからである。

C2, R4, C3, R5 バンドパスフィルタ

マイクの出力から直流成分をカットするC2,R4ハイパスフィルタ(カットオフ周波数1.59Hz)は当然必須。
少々変わり種なのが高域を落とすC3 + R5のローパスフィルタ(カットオフ周波数3386Hz)で、これはAOM5024自体がかなり高域のキツいマイク故好みの音を出すために導入した。
「音質の好みなんか録音後にEQかけりゃええねん!」という場合はC3とR5を丸っと無くしてFetのGateに直入れで良い。
コンデンサの選別もセラミック系じゃなけりゃ何でも良い…というか違いが全然わからない。
今回は家に転がってた素性不明のコンデンサを使ったが、買うなら↓とかになるんじゃないかな
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g105327/
https://akizukidenshi.com/catalog/g/g114602/

R6 差動増幅回路の電流制限

ここ、当初は電流制限用にIdss=2mA程度のFETをGate/Source間ショートで試していたのだが、見事にホワイトノイズ塗れになって駄目だったので逃げの10kΩ抵抗とした。
理屈の上では性能が上がりそうなもんなのに何で駄目だったのか未だによくわかっておらず、今後なんとか勉強する予定。
とりあえずここもそこそこ大きめの抵抗を1本挿しておけば良い。

マイクカプセル AOM5024HD-F-R

https://www.marutsu.co.jp/pc/i/35065163/
Digikey等でしか売っていないのだが、マルツが代わりに売ってくれる。お一つおよそ700円也。
ちなみにHD-RとHD-F-Rの違いは表面に黒い膜が貼ってあるかどうか。あったほうが得した気分になるのでHD-F-Rを選択。
もしも初めて3線改造に挑む場合は必ず予備を買っておくように。一発成功はなかなか難しい。

ちなみにこの回路は3線改造を行ったマイクであればほとんど何でも互換性がある。
例えば小型で改造が難しいがSNR72dBの性能を誇るEM158 → https://akizukidenshi.com/catalog/g/g113215/
音質はイマイチだが直径がAOM5024と同じで改造しやすいC9767 → https://akizukidenshi.com/catalog/g/g101810/
美耳がもともと使っているXCM6035 → https://akizukidenshi.com/catalog/g/g108181/
等。特にC9767はAOM5024で改造する前の練習に最適な上100円4つ入りなので、初めての場合は一回これで仕上げてみる事を推奨。

基板

当初は秋月C基板で手組していたが、今回勉強も兼ねてFusion PCBで発注をかけてみた。
基板レイアウトはGithub参照。
秋月C基板の名残でサイズが47*72になっており、一応互換が効く。
あと発注ロットの都合で、基板が丸々20枚近く余り散らかしたので、Twitterとかで言ってくれたら差し上げます。

筐体について

ケースは3dプリンタで形成する。
3dプリンタはAnycubic社のKobra 2 Proを使用。
M3ナットを沢山使うので、M3の12ミリネジとM3*6ミリのイモネジ、大量のナットを買っておく。

プリントに関してだが、とにかくファーストレイヤーをゆっくり生成するのがコツ。
PLAならファーストレイヤー60mm/sで、ヒートベッドも70℃まで加熱する。
ヒートベッドはよく60℃程度で設定する例を見るが、本体はデカいので反りが起きやすく、ブリムがしっかり定着しないと形成した先からパキパキと剥がれていくので、強気の70℃がお勧め。
一層目は速度もちょっと上げただけでいきなり定着が悪くなったりもするので、とにかく使う機種とフィラメントに合わせてじっくりテストを重ねると良い。

使ってみた所感

あとでここにメイキング動画のURL貼る

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