日本ではファンタム電源に繋ぐECM駆動回路がパナ改くらいしか見当たらないので、
海外フォーラムでよく見かける回路を紹介しようと思う。選択肢が増えれば幸い。
かんたんSchoeps回路
3線改造したマイクの内蔵JFETを位相分割に使い、PNPトランジスタ2つでエミフォロする。
2N5087は日本で主流な2SA1015に置き換えが可能。また、3線式のECMならWM-61Aじゃなくてもいい。
ツェナーを用いず、抵抗だけでマイクへかける電圧を調整しているのがオシャレポイントだ。
ツェナーの排除はパナ改の理念にも通じるが、とかくヤツは(特に5V以上のは)ホワイトノイズをぶちまけるのだ。
数値を弄る必要があるのはR5、R6、R7。
まずR5とR6は同じ値の抵抗である必要があり、4.7k~10kくらいなら音質に影響はない。
R7はマイクのドレイン(端子番号1と書かれたところ)とGNDの電圧が10V以内になるよう調整する必要がある。
例えば2SA1015GR(大体hfe=300)を使う場合なら、R5=R6=4.7k、R7=60kくらいだ。
R7は上げる程マイクにかかる電圧が下がるので、100k程度の可変抵抗で調節すると良いだろう。
ちなみに10Vという数値はよくあるマイクの最大電圧なので、本当は各々ちゃんと調べたほうが良い。
また、C3とC6ももう少し容量を増やして構わない。1uくらいまでならあってもOK。
この回路のメリット
- まぁまぁやすい
- 十分高音質
- いちおうバランス伝送(長距離ケーブルが可能だが完全ではない)
- ファンタムなので外部電源いらず
この回路のデメリット
- パナ改よりはパーツが多い
- トランジスタのマッチングが必要(ざっくりでも大丈夫だよ)
- 電圧調整が必要
Simple P48
3線改造とかではなく、プラグインパワー用の2線マイクをファンタムで駆動する回路。
超単純!!
ちなみに3番コールド(赤線)がマイクのドレイン(+端子)で、黒がマイクのグランドだ。
ただしEM158やW61Aは正極+のはずなので、2番と3番を逆にしたほうが良いと思う。ミスだろうか?
Rの値はマイクの2端子間が10V以内になるよう調整する。大体47kとかのはずだ。これもRを増やすとマイクにかかる電圧は下がる。
この回路、構成は単純だが中々かっこいい挙動をするので細かく解説してみる。
ファンタムで動作する回路は供給側の回路を意識する必要がある。
ファンタム供給側の回路は決まっていて、48Vから6.8k抵抗を介してH,Cを提供する。
まず直流的に回路を見てみる。
回路の右側は48V→6.8kときてコンデンサ4.7uが刺さっているので、直流的には完全にオープンだ。
一方左側は48V→マイクの内蔵JFET→Rと来てGNDに落ちる。
ここでJfetのDS間抵抗は概ね~数百Ωなので、48Vの電圧を6.8k抵抗、DS間抵抗、R抵抗で折半する事になる。
つまりマイクカプセルはたかだか10Vしかかけられないが、マイクのGND側に数十Vかけてやる事で端子間の電圧を10V以内にしているわけだ。
発想としては2線式Linkwitz Modにかなり近いと言えよう。
交流的には、なんのことはないソース接地のような挙動をする。
ただし、コンデンサを介して逆相の信号をきっちりHotに送っているところがおしゃれポイントだ。
この回路のメリット
- くそやすい
- くそかんたん
- プラグインパワーよりはマシな音質(XLRはマシなアンプが多いので)
- ファンタムなので外部電源いらず
この回路のデメリット
- 2線式なので3線式よりは歪がある
- バランスではない為長距離引き回しは無理(プラグインパワーよりはマシ)
- 電圧調整が必要
MATOME
これからマイクで遊ぶぞーオラーって人は簡単なP48→3線改造デビューで簡易Schoepsとステップを踏むのが良いと思うぞ。
ちなみに初心者がいきなりパナ改チャレンジはおすすめしない。背景を理解してないと結構ハマるので。